時計の針の行方

「ほら、このサラダ、とっても体に良いのよ~彩ちゃん痩せてるんだから、いっぱい食べなさいね」

麗奈は、しきりに美空に食べることを勧めている。
元々、太らない体質なのか、美空は全体的にほっそりしていた。
それを心配したのだろう。
麗奈は、美空のことを本当の娘のように可愛がっていた。

「彩ちゃんがウチに来てくれて嬉しいわ~
息子しかいなかったから、こうやって、可愛い娘さんと食卓を囲むのは夢だったのよ」

美空も、麗奈の言葉に甘えて、勧められた物を美味しそうに食べていた。


………
母さんは、なにか勘違いしてるな。
以前、ハヤトがハムスターを友達に貰ってきたとき、世話はほとんど麗奈がしたのだが、世話をした五匹全部が肥満ハムスターと化していた。


麗奈に言わせると、「痩せてるより太ってるほうが、可愛いし健康的でしょう?」だそうだ。
麗奈自身も痩せてはいるのだが、いかにも女らしい体つきをしていた。
元々、痩せているので、太っているほうが健康的だと思い込んでいた。
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