時計の針の行方
「冗談とか言うなよ。まるで、恋人みたいだったぜ。
昨日は、ラブラブだったんだろう?」
上江田は、相変わらずニタニタしながら言った。
………
ラブラブ……
ラブラブねえ…
「なあ、上江田よ。お前、美空と一緒なのが羨ましいのか?」
「そりゃ、羨ましいに決まってるだろ!! こんな田舎に、あそこまで可愛い女の子は二人といないからな!」
上江田の発言に、周りが上江田の方を向く。
声がデカいのも原因だったのだが、ほとんどが上江田の話した内容で振り向いた。
微妙に、殺気混じりの視線がハヤトにも突き刺さっているのが分かった。(主に女子からの)
とにかく…こいつがモテない理由が分かったような気がするよ……
そして、話題の中心の美空はというと、先ほどから別の女子とお喋りに没頭しており、上江田の発言に気付いていなかった。
「なあ、上江田よ。
食べるのは、タラタラ遅くて、どんなに頑張ってもなかなか起きなく、挙句の果てには気の強い性格だときたもんだ。
そんな女が好…」
そう言い終わる瞬間に、後ろから身の毛が震え上がる殺気を感じ、話を中断して振り向くと、笑顔混じりの美空が立っていた。
「ハー、ヤー、トー、今誰のこと言ってたのかなぁ~?」
あくまでも笑顔を貫きながら、ハヤトに質問する。
逆にその笑顔が恐い。
笑顔と溢れんばかりの殺気が全くと言っていいほど、合っていなかった。