時計の針の行方

つうか…… さっきまで大声で上江田が話す声には気付かずに、なんで俺のひそひそ声が聞こえるんだよ…


上江田の方を見ると、ビクビクと震えていた。

おい、上江田よ。
さっき、自分で羨ましいと言った女が隣りにいるんだぜ。もっと喜べよ…

しかし、ハヤトはあくまでも強気でいくことにした。
このまま謝っていたら、ハヤトの立場は強固なものになってしまう。
それだけは、避けたかった。
一呼吸してから、ハヤトは美空に言った。


「誰のことって……お前以外に誰がいるんだよ」
そう言った瞬間、パァン!!と大きな音がした。
美空は、ハヤトのほっぺたにビンタした後、後ろから右手を首に巻き付け、力を徐々に加える。

「なに?なんて言ったの?
もしかして、このお口が悪いのかなぁ~?」

そう言うと、左手でハヤトの口を引っ張った。


ちょ……上江田…助けてくれ…

悲願の目で上江田を見つめると、相変わらずオドオドしていた。
図体はデカいのに、使えない奴だ。
そして、このまま誰の助けもないのかと、諦めかけたその瞬間、前方から威勢のある声が響く。

「ほらぁ!!ホームルーム始めるからイチャイチャしてないで、さっさと席につかんか」
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