虹の向こうへ~君と見た空をもう一度~
まだあの時のことを何回も聞いてくる。
その度とても申し訳なくなる。
「いいえ、大丈夫ですよ?」
内心謝りながら答える。といっても表情は変わらない。
いや、変えれない。
いつでも笑っていられる藤堂さんが羨ましいな・・・
「それにしても綺麗ですね・・・どうしてまだ咲いていたんでしょうか?」
「あぁ、なんか伝説があるらしいけど・・・」
それから藤堂さんが話してくれた、この桜の伝説はとても切なかった。
夫と死に別れた女が、一緒に植えたこの桜の傍で毎日泣き続けた。
そして、天の神に祈ったそうだ。――――
あの人の所へ行かせてください、と。