虹の向こうへ~君と見た空をもう一度~
でもその願いは叶わなかった。
でも・・・変わりに二人でずっと一緒に居られるようにしてあげたそうだ。
そして、女と男の魂はこの思い出の桜に宿り、ずっと思い出の桜を咲かせている・・・
「そうなんですか」
「でも・・・僕はあまり好きじゃないな」
・・・なぜ、夫の分も生き続けようとしなかったのか?
藤堂さんはそう言った。そりゃそう思うのも当然だ。
自ら命を絶とうとしたわたしを止めた彼ならそう思うだろう。
でも・・・
「寂しかったんですよ、多分。彼女の世界は夫だったんですよ」
桜を見上げながら呟く。
桜になった女の気持ちが痛いほどよく分かった。