よくあるパターン
そう思う間もなく、社員達の目の前で、私は新人の後輩に唇を塞がれた。

絡む舌に甘ったるい、梅酒の味がする。

「あー!まだ王様ゲーム始めてもいないのに!」

同僚が見当違いの声をあげる。
合コンじゃないっての。

私は強引に唇を離して、こぶしをぎゅーっと握ると彼の頭を思いきり殴った。

「痛いです、新井先輩」

「当たり前でしょ。無礼講って言ってもこういうのはナシよ、反省しなさい」

「……はい。ごめんなさい」

まあ、謝ったから良しとするか。

そう思って、私は口直しに目の前の梅酒を一気に飲み干す。

「あ、それ、僕の……」

後輩の一言。

「…………」

君のものは私のもの。

私は高慢に言い放って、おかわりを注文した。

後輩が私の隣に腰をおろして、あろうことか寝そべって太股の上に頭を乗せる。

「ちょっとぉ!?」

私、社員の目の前で、新人君を膝枕してる。

恥ずかしくなって、彼の頭をくしゃくしゃに掻き回した。

「僕、新井先輩が好きなんです~」

「私、彼氏いるのよ?」

「そんなの関係ありましぇん」

すやすやと寝息をたてる後輩に、絶句する代わりに唸った。

うーん、こういうパターンもあるのかと。





―おわり―
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