わらって、すきっていって。
本城くん、ひとりでなにしてたんだろう。後夜祭には行かないのかな。
開け放った窓に腰かけているその姿は、紺色に染まりかけている空に溶けてしまいそうで、こわくなる。
「……安西さんは、行かねーの、後夜祭」
「えっ。あ……うん、えっちゃんとちーくんが、待っててくれてるんだけど」
「そっか」
「うん」
あれ。どうしよう。
お礼はちゃんと言えたけれど、このまま教室を出ていくのは、なんか違うし。でも、なにから切り出せばいいのかも分からない。
いつの間にか本城くんは窓の外に視線を移していて。彼は、ぼんやりと、グラウンドを眺めていた。
「……美夜に、聞いたんだろ」
「えっ?」
「事故のこととか、いろいろ。聞いたんだろ、全部」
低くて静かな声だった。心にぶら下がったままのおもりが、その声でもっと重みを増すから、真っすぐ立っているので精いっぱい。
「……ほんとう、なの?」
かすれた声になってしまった。おまけに消え入りそうなほど小さい声しか出ないので、ちゃんと聞こえているか不安だ。
でも、本城くんは、答えるようにこっちを向いて。
「本当だよ」
たった一言。でも、刃物のように尖ったそれを、わたしののどに突きつける。