わらって、すきっていって。

自室に戻ると、すぐにスマホを開いて、本城に電話をかけた。夜遅かったのでさすがに出てくれないかと思ったが、本城は6回目のコールで出た。


「もしもし、霧島?」

「よお、本城。遅くにわりーな」

「いや、大丈夫。……なに?」


なに、だってよ。しらじらしいにも程があるって。心当たりなんてありまくりのくせに。


「あのさあ、今度うちでゲームしようぜ、ゲーム」

「ゲーム?」

「おー。ひとりじゃ捗らなくてさあ」


受話器の向こう側から大きなため息が聞こえた。なに言ってんだこいつ、みたいなため息だった。

たしかに、自分でもなに言ってんだオレって思う。でも、しょうがねえだろ。実際に殴るのはさすがにできないから、得意なゲームでボコボコにさせてほしい。

……いや、待てよ。もしかしたら本城のほうがゲーマーで、逆にボコボコにされてしまったら、どうしよう。


「……分かった」


数秒間の沈黙のあとで、本城が静かにそう答えた。それ以上も以下もなかった。

それでも、覚悟を決めたようなその声色に、なぜかオレのほうが鳥肌が立ってしまう。


「ちなみになんのゲーム?」

「こないだPS4の地球防衛軍買ったから、それ」

「もう4買ったのかよ。早いな」

「兄貴がゲーマーだからな。バイオハザードでもいいけど」

「どっちでもいいよ、よく分かんねーし」


よく分かんねーのか。よし、これはオレのほうがボコボコにできる可能性が高そうだな。

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