わらって、すきっていって。
「インハイの決勝。あーこいつかっこいいなあって、悔しいけど、素直に思った」
まっすぐ背筋を伸ばして、凛と前を向いて。迷いなく、ただ黙々と地面を蹴っていくその姿は、正直、もうめちゃくちゃかっこよくて。
敵わねえなって、思った。
そりゃあんこだって泣くよ。オレだって泣きそうだったんだもんよ。
コントローラーをひとつ渡す。本城は黙ってそれを受け取ると、ぴこぴこと、意味もなくボタンを押していた。きれいな指だな、ちくしょう。
「……あんこのこと、好きだろ?」
本城の指が止まった。ほらみろ、図星じゃんか。
「言えよ、好きだって」
「……死んでも、言わねー」
低い声だった。そこでゲームスタートすると、本城があわてたようにコントローラーを握り直すので、ちょっと笑えた。
「でも否定はしないんだな」
「霧島だって否定しないだろ? 安西さんを好きなのかって訊かれても」
「……そこ、バレてんのかよ」
「そりゃあ。見てたら分かるよ。霧島って分かりやすいし」
「本城にだけは言われたくねえかなー」
不思議な感じだ。お互いの気持ちは分かりきっているはずなのに、恋敵みたいな、そういうギスギスしたものはなくて。
むしろオレは、変な同族意識のようなものを感じていた。いまゲームでも協力しているからかもしれない。