わらって、すきっていって。
「……死んでも口に出さないつもりだったのに」
ひとり言みたいにそうこぼしたその言葉を聞いて、オレのなかのなにかがプツンと切れた。
そして、気付いたら兄貴の大切なコントローラーをソファにぶん投げて、そのまま本城の胸ぐらを掴んでいた。
ちょっと自分でも驚いた。こんな漫画みたいなこと、まさか自分がするなんて。
「言ってみろよ。1から10まで、ちゃんと説明して、オレのこと納得させろよ。なんも言わねえまま、あんこのこと泣かせといて許されるとか、おまえ本気で思ってんの?」
ああ、嘘だろ、なんでオレが泣きそうなんだよ。
「なんとか言えよ、なあ。おい、聞いてんのか……!」
「――結婚を約束した子が、いる」
「は……?」
「霧島も会っただろ、インハイのとき。幼なじみの竹内美夜だよ。小5の夏、俺があいつを嫁にもらうって、約束した」
インハイ。幼なじみ。タケウチミヨ?
……ああ、あの車椅子の女か。顔はそれなりにカワイイのに、キッツい女だったから、よく覚えている。
「美夜が車椅子で生活してんのは、トラックに轢かれそうになった俺をかばって、代わりにはねられたからなんだ。その日、俺はあいつから、自由に動く両脚も、モデルになるっていう夢も、全部奪った。
泣いて謝った。謝っても許されねーなんてことは分かってたけど、それ以外にできることなんてなかったし。でも、そしたらあいつ、『お嫁にもらってくれるなら許してあげる』って。……笑って、言ったんだ」
冗談だろ。そんなのありかよ。だって、本当だったら、これってちょっと、あんまりだろ。