わらって、すきっていって。

本城の胸ぐらを掴んでいたオレの両手は、ゆるゆると握力を失っていった。無意識のうちだった。

すると目の前の男は、ソファに腰かけたまま、オレを見上げて、静かに続けた。


「俺が、美夜の人生を背負うって。そのとき決めた。悪いけど、もう、決めたんだ」


可哀想だなって、思うよ。本城のことも、そのミヨとかいう女のことも。可哀想だ。同情する。

でも、じゃあ、あんこは?


「……だったら、おまえ、なんであんこのこと好きになったりしたんだよ?」

「俺だって、誰のことも好きになったりしないって決めてた」

「でも、どうしようもなく、好きになっちまったんだろ? あんこが好きなんだろ?」

「……好きだよ。でも」

「『でも』じゃねえんだよ!」


いつの間にかテレビの画面にはゲームオーバーの文字が表示されていた。ふたりともすっかりコントローラーなんか投げだしているんだし、そりゃそうか。

ゲームオーバーのBGM、うぜえなあ。


「なあ。あんこの気持ちはどうなんの? 可哀想な本城と、可哀想なミヨに振り回されてるあんこは、どうしたらいいんだよ。むしろ、あいつがいちばん、可哀想なんじゃねえのかよ」

「それは……」

「自分のせいで歩けなくなった女の人生を背負ってやる。立派な覚悟だよ。でも、おまえのそれは、自己満足だろ?」


とたん、本城の顔色が変わった。
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