わらって、すきっていって。
「言えよ。ミヨとやらに、ほかに好きな女がいるけど、責任感じてるからきみを嫁にもらいますって。あんこに、本当に好きなのはきみだけど、結婚の約束をしてる女がいるので付き合えないですって。ちゃんと言って、それぞれに頭下げてこいよ。
おまえも同じように傷つけよ。ズルすんな。ふたりに軽蔑されろ。
……だってさあ、このままだと、おまえもキツくね?」
目の前の男は押し黙って、そのままうつむいた。だからオレも離れて、隣に座り直した。
「おまえはいま、誰のことも救ってない。自分のことすら、救えてねえんだよ」
かっこつけた、綺麗事ばかりを並べてしまったことは、自覚している。オレだって他人に説教できるほどの人間じゃないってことも、よく理解している。
でも本城は「ごめん」と、小さな声で、そう言った。
「やっぱり、安西さんは霧島と一緒にいたほうが幸せになれると思う」
この期に及んでまだそんなこと言うのかよ。本当に女々しくて、バカなやつだな。イライラするよ。
「ダメなんだよ、オレじゃ。嫌味か?」
「いや、本気。いま俺にぶつけたこと全部、安西さんにぶつけたらいいのにって、わりとまじめに思った」
「バカだなー。そんなことしたらあんこが困るだろ」
そうだ。きっとあいつは困る。オレが好きだのなんだの言ってしまったら。
たぶん、あいつはオレとの距離を測りそこねて、どんどんふたりの溝は深まって。そしたらたぶん、オレたちは幼なじみですらいられなくなる。
「あいつのこと困らせたくねーし。それにオレは、“幼なじみ”を捨てるのも、嫌だから。……いいんだよ、これで」
ありふれた、お決まりの理由で、情けねーんだけど。