わらって、すきっていって。

なっちゃんと私はいつも一緒だった。といっても、私が勝手に彼になついていただけなんだけど。

それでも、なっちゃんはずっと私に優しかったし、そんな彼が、私は大好きだった。それはいつのころからか恋に成長していた。


だから本当はうれしかったのかもしれない。

両脚が動かなくなったあの日、もちろんたしかに悲しくはあったけれど。でも絶望はしていなかった。

泣いて謝るなっちゃんを見て、ああ、もしかしたらこのひとが手に入るかもしれない、なんて。心の底で私は、恐ろしい希望すら抱いていたんだ。


結婚してくれるとか。本気にしているわけじゃないけれど、半分は私、本気なんだよ。


「……なっちゃんはさー」

「ん?」

「好きな子とか、いないの?」


なっちゃんのきれいな手が動きを止めた。分かりやすすぎて悲しくなった。


「……ふは。いねーよ、そんなの」


嘘ばっかり。なっちゃんは嘘をつくとき片眉を下げて笑うの、私は知っているんだから。

でも、なっちゃん。なっちゃんがこういう質問に、『美夜が好き』と答えてくれたことは、一度だってないね。


「そっかー。学校楽しい?」

「楽しいよ。美夜は?」

「楽しいよー! あのね、きょうね」


うんうん、と笑顔で聞いてくれるなっちゃんは、私の前ではいつもこの顔をしているから、本当の気持ちが見えにくい。

小町ちゃんや高校の友達にはもっと別の表情を見せているのかな。怒ったり、泣いたり、照れたり。そういうの、そういえば、私はもうずいぶん見ていないなあ。
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