わらって、すきっていって。
本当はもう、答えはすっかり出ているんだ。なっちゃんが私とは違う高校へ進学することを決めたとき、はっきり分かったから。
このひとの気持ちが私のほうへ向くことは、きっと一生ないんだって。
それでもこの優しすぎるひとは、一生、私の傍にいてくれようとしているんだって。
本当は、もう、分かっている。こんなおままごと、もう終わりにしなくちゃいけない。
分かっているんだ。私がこのひとの人生を奪ってしまっていることも。早くこの優しさを手放さなくちゃいけないことも。
誰に言われなくたって、私だって。痛いくらい分かっているの。
「なっちゃん」
「ん、どうした?」
「……ぎゅってして」
「どうしたんだよ」
息を吐くように少し笑って、彼はいつものように私を抱きしめる。いいにおい。なっちゃんのにおいだ。
なっちゃんはいつも、お日さまのにおいがする。
あったかい。
「……なっちゃん」
「ん?」
「ねえ、キスして?」
私を抱きしめている腕がこわばった。
そう思うと、そっと腕が緩んで。まさか本当にしてくれるのかな、なんて、淡い期待を抱いた。
だって、なっちゃんが私のお願いを断ったことなんて、いままでに一度だってない。