わらって、すきっていって。
それでも私を見下ろすその顔は、いつになく悲しくて、真剣そのものだった。だから驚いた。驚いて、ぼうっと彼の顔を見ていると、そのくちびるが小さく動いた。
「……美夜、ごめん。それはできない」
とても低い声だった。
分かっているよ。なっちゃん、分かっている。私は絶対になっちゃんの“好きな女の子”にはなりえないんだ。
でも、分かっているはずなのに、自分でも驚くほどショックを受けていて。だってはじめて断られたんだ。私のお願いを、こんなにも、あっさりと。
「……美夜と、結婚するのに?」
「美夜……」
「そんなんでなっちゃん、ホントに美夜と結婚できるの? 美夜はチャペルで結婚式挙げたいし、そしたら誓いのチュウだって……」
「――美夜、ごめん」
ごめん、なんて。そんなふうに謝らないで。苦しそうな顔で言わないで。
なっちゃんはいつだって、私の前では、優しく笑っていてよ。
「できない。……ごめん」
彼はもう一度謝った。言いながら、私をふわりと抱きしめた。優しく包みこんでくれる両腕をぎゅっと掴む。
目を閉じると、彼の鼓動の音が直接体内に流れこんでくるみたいで、安心した。
「……ううん。美夜も、ごめんね」
ごめんね。こんなにも手放してあげたいのに、手放せないままで、ごめんね。
もう少しだけ、その優しさを私にひとりじめさせてほしい。ごめんね、なっちゃん。
美夜のせいで、ごめんね。