わらって、すきっていって。


その日は快晴だった。カーテンを閉めていても部屋に差しこんでくる朝日がまぶしすぎて、めずらしく低血圧の私が勝手に目覚めたくらい。

そんな日曜日。なっちゃんが、なぜかドーナツを持って、朝からうちにやって来た。


すっぴんとか、寝起きのぶさいくな顔とか、頭ボサボサとか。そういうのはもうあんまり気にしていない。小さいころから一緒にいたわけだし、これ以上にかっこ悪い姿もたくさん見られてきているし。

でもやっぱり、不意打ちは困るわけで。


「もー! 急に来るときは連絡してって言ってるじゃんっ」

「ごめん。なんかいてもたってもいられなくて……その、ドーナツ買ってきた。いちごのやつ」


最近、なっちゃんの様子がおかしい。なっちゃんたちの学校の文化祭が終わったあたりからかな。

べつに普段からそんなにすごく元気いっぱいなひとってわけでもないけど、そのあたりからもっと元気がないような。しゅんとしているというか。私には分かるんだ。

なにかあったのか訊いてもなにも言わないし。だからこれ以上は訊かないけれど、たぶんきっと、いや絶対。なんかあったんだろうなあ。

……小町ちゃんと、かな。


「いちご? 美夜のいちばん好きないちご?」

「うん、たぶん」

「たぶんってなにー」


手渡された袋のなかを覗きこむと、ちゃんと私のいちばん好きないちごのデニッシュドーナツが入っていて、ちょっとむかついた。

間違えていたら盛大に怒れるのに、なんだよ、正解じゃん、ばか。
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