わらって、すきっていって。

「ねえ、なっちゃん。なにを話しに来たの?」


自分のことを話してくれるの、うれしい。ゲームが楽しいとか、そういうどうでもいいことだってすごくうれしい。高校に上がってからなっちゃんは、自分のことを全然話してくれなくなったから。

平日の夜は毎日、顔を見せにうちに来てくれるけれど。いつだって話すのは私ばかりで、彼は私が訊くまで口を開こうとさえしなくて。

だから、そんなふうに自分からたくさん話してくれるの、うれしいんだ。

でも、きょうは、なんとなく。なっちゃんが饒舌であればあるほど嫌な予感がしてたまらないよ。


「……好きな子が、できた。ごめん」


思っていた通りのことだったけれど、思っていたよりもあっさり言われた。

頭をハンマーで殴られたみたいだ。目がチカチカする。のどの奥からなにかがこみ上げてくる。

分かっていたのに、おかしいな。思ったよりショックだ。なんだこれ。想像以上。


「……うん、そっかー、へー」

「ごめん、美夜」

「べつにー」

「ごめん」


謝らないでよ。ゴメンを言われるたびに、まるで心臓がえぐられていくみたいで、きついよ。痛くてたまらない。


「あのさー。それって、小町ちゃんでしょ?」


うつむいていた彼の顔ががばっと上がり、こっちを向いた。切れ長の目がまんまるに見開いているので、ちょっとおかしかった。


「あは。正解だー」


ねえ、私に分からないとでも思った?
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