わらって、すきっていって。

「美夜には敵わねーな」


ひとり言のように彼がこぼしたそれは、聞こえていないふりをした。

小町ちゃんを好きだって認めた言葉なんて、聞きたくない。聞こえていない。知らない。


「なあ、美夜、あのさ」

「いいよー?」


わざと大きな声を出してやった。なっちゃんは案の定、言葉に詰まって、うかがうように私を見ると、なんともいえない顔をした。


「なっちゃんが誰を好きだって、美夜は全然気にしないよ? だって約束したもんねー。なっちゃん、美夜と結婚するって」


私ほど性格の悪い女ってたぶんいないだろうなあ。こんなだからなっちゃんに好きになってもらえないんだ。知っている。

それでも、嫌なものは嫌なの。むかつくものはむかつくし、悲しいものは、悲しい。

せっかく手に入れた優しさをほいほい簡単に誰かに手渡せるほど、私はいい子にも、大人にもなれないよ。でも自業自得なんだ。なっちゃんがずっと私を甘やかしたりするから。

私がどうしようもなくわがままなのは、なっちゃんが優しすぎるせいだ。


「……美夜」

「言わないで」


困った顔しないで。そんな、傷ついた顔しないで。

美夜の前で、しないで。


「美夜とは結婚できないとか……言わないで、お願い。なっちゃん、お願い……」


ああ、情けない。絶対に泣かないって決めていたのに。泣いたらもっとあきれられるだけなのに。

サイアクだ。涙、止まってくれない。かっこわる。
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