わらって、すきっていって。
「……そんなのずるいよ、なっちゃん。ほんっとずるいなー」
こんなに好きにさせておいて。なっちゃんは別のひとに恋をして、私には『幸せになれ』なんて、勝手なことを言う。
ほかの誰かなんて考えられない。なっちゃん以外の男なんてみんな嫌い。
それくらい、私のすべてはなっちゃんに向いているんだよ。そんな私がなっちゃん以外の誰かに恋をする日なんて、本当にくるのかな。
……でも、くるのかもしれない。
なっちゃんと小町ちゃんが、出会って、恋に落ちたように。
私もいつか、私を心から愛してくれる誰かを、心から好きになれるのかもしれない。
「なっちゃん。今度は間違えちゃダメだよ、優しさの使いどころ」
「うん」
「ほらー、美夜みたいな犠牲者がでちゃうんだからさー」
「うん」
「……ちゃんと、前を見て、歩いていくんだよ。なっちゃんの人生をね。あ、違うか、なっちゃんは走るのかー」
私も自分の人生をまっとうしていくから。両脚で地面を踏みしめて進むより、ちょっとゆっくりかもしれないけれど。
私はこの両腕でたしかに車輪をまわして、前に進む。きっと進んでいける。
だから、なっちゃん。これからは、少し離れた場所から、ちゃんと見守っていてよ。
それが私の、最後のわがままだよ。