わらって、すきっていって。
「そういえばさあ」
ふと、ちーくんが思い出したように声を出した。
「本城、K大受かったんだってな」
「え……」
「陸上の推薦だってよ。『陸上界隈ではちょっとした有名人』ってアレ、マジなんだな、あいつ」
えっちゃんがちーくんの腕をおもいきり叩いた。ちーくんは同時に「あ、やべ」とこぼすと、申し訳なさそうな顔をわたしに向ける。
ありがとう。気付いているよ。ふたりが、なるべく本城くんの話題を出さないでいてくれていること。
「いいんだよ、ごめんね、ありがと。ていうかすごいねえ、本城くんはさすがだなー」
K大。わざわざ調べる必要もないくらい有名な大学だ。しかも東京の大学。
本城くんは、わざわざこの街を離れてまで、好きな陸上を続けるんだ。すごいな。地元の国公立大ねらいのわたしとは、やっぱり住む世界が違うひとだ。
そりゃあ振られるに決まっている。わたしみたいなのが彼に釣り合うわけがないもの。
「わたしなんかN大ですらいまだにD判なのに。どうしよう、センターまであと1か月とちょっとだよー……」
「大丈夫だ、あんこ。オレなんかE判だから、第一志望」
「ちーくんはわたしよりうんとレベルの高い大学ねらってるからじゃん! えっちゃんはもうずっと志望大B判だし……。はあ~、わたしだけダメダメだなあ……」
誰だ、受験は団体戦だなんて言ったの。あんなの絶対に嘘だ。
みんなに置いてけぼりのわたしは、きょうもひとりぼっちで、第一志望大学D判定と闘っているというのに。
それにしても、そっか、K大か、本城くん。東京に行っちゃうのか。一生会わない説がいよいよ現実味をおびてきているじゃないか。
……まあ、どうせもう、振られているんですけど。