わらって、すきっていって。
人見知りをしない、他人とのあいだに壁のない、友達の多いちーくんは、気付けばそのあたりにいた生徒に声をかけていた。するといつの間にか知らないひとがこっちにちーくんのスマホを向けているから、ちょっとわたし、テンポについていけていない。
「ほら、あんこっ。ピースな、ピース!」
「う、あ、はいっ」
カシャ、と。小さな音で鳴ったスマホをすぐに確認して、ちーくんは「ばっちりだ」とうれしそうに笑う。
「じゃあな、あんこ! またあとでなー!」
「あ、うん、またね!」
ちーくんは大変そうだなあ。友達が多いと、あっちこっちに引っ張りだこで、うらやましいけど、ちょっと忙しそうだ。
彼はもうすでに、遥か遠くのサッカー部の輪のなかにいた。風みたいなひとだ。そんな彼が、もうかれこれ18年間、ずっとわたしと仲良くしてくれているのって、もしかしたらすごいことなのかもしれない。
「あーんこっ。写真撮ろー、写真」
また肩を抱かれた。この細っこい腕と、あんこって呼ぶ優しい声は、えっちゃん以外にいないはず。
「えっちゃん! ……あれ? 野間くんは?」
「あいついま本城たちと一緒にいるよ。だからあたしらも写真撮ろ、ねっ」
今度はスマホのインカメラ。いわゆる自撮りってやつだった。えっちゃんはいろんなカメラアプリを持っているから、いつでもどこでもきれいに撮れて、ちょっとびっくりする。
まあ、えっちゃんは、素材がわたしの1億倍くらい良いんだけど。
そんな彼女は、年明けごろから野間くんと付き合い始めたらしい。そのことはいちばんにわたしに報告してくれた。いろんな意味で、すごくうれしかった。