わらって、すきっていって。
「……なあ、もう、返事もらえないかと思ってたよ」
黙っているわたしの代わりに、口を開いたのは彼のほうだった。
ああ、この優しくて低い声、やっぱり好き。
「あ、の……」
「あれ。もしかして、そうじゃなくて?」
「そ、そうです! そうです……返事というか、なんというか、その」
「うん」
わたしの瞳を覗きこみながら、本城くんが少し首をかしげる。人の話を聞くときに彼がするこの仕草、かわいくて、すごく好き。
「……受験、がんばったよ、わたし。あ、おととい終わったんだけどね。受かってるかは分かんないけど、いままででいちばんがんばったし、やりきった……と、思う」
「うん、すげーよ、それって」
「うん、あのね、だから」
顔を上げた。その先には、もうすぐ近くに大好きなひとがいて、しかもわたしを見つめてくれているのだから、うっかり呼吸するのを忘れそうになる。
やわらかそうな黒い髪。彼の小麦色の肌を撫でるそれが好きで、いつか触れてみたいと思っていた。
「……だから、その」
「うん」
「わたしね……本城くんに言いたいことがあって」
「うん」
ああ、どうしよう。なにも言葉が出てこないや。伝えたいことはたくさんあるはずなのに、うまく言葉にならない。声すらでてくれない。
ねえ、でもね。たぶんわたし、それくらい好きなんだ、本城くんのこと。