わらって、すきっていって。

風が吹く。同時に舞いあがった、わたしの中途半端な長さの髪は、見事にわたしの口にゴールインした。最悪だ。よりにもよってこのタイミングで髪の毛食べちゃうなんて。

でも、それをほどいてくれたのは、彼の優しくて大きな手。


その瞬間、気持ちが爆発するのが、自分でも分かった。


「ずっと……遠くから見てるだけでいいって思ってた。本城くんの全部、べつに、わたしのものにならなくてもいいって。でも、どんどんわがままになって、いつしかわたし、本城くんのこと、ひとりじめしたいって思うようになってた」

「うん」

「その優しい声も、大きな手も、小麦色の肌も、やわらかい髪も。笑った顔も、ちょっと変な癖も……全部」

「……うん」


涙がこぼれる。なんの涙かは自分でもよく分からなかった。

でも、わたしの身体ではもう、この大きすぎる気持ちを支えるのは無理そうだってことは、なんとなく分かった。



「――わたし、本城くんが、好きです」


ああ、やっと。やっと、言えた。

声は震えていないかな。ちゃんと、伝わっているかな。


「うん」

「本城くんのこと、ずっと、好きでした」

「うん」

「はじめて見たときから、ずっと……」

「うん」


涙が止まらないよ。次こそは笑って言おうって決めていたのになあ。やっぱりダメだなあ、わたし。


「もう、どうして『うん』しか言わないんですかっ……」

「……うん、ごめん」


本城くんのきれいな指が、わたしの目尻に優しく触れて、そっと涙を拭う。
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