わらって、すきっていって。

席替えをした。新しいクラスになって1週間くらいたってからのことだった。

本城くんとはそんなに近い席じゃない。そうそううまくいくわけない。

それに、本当はちょっと安心もしているんだ。だってきっと、たとえ席が近くなったとしても、それはそれで緊張して授業どころじゃないと思うもん。


新しい席は、左斜めうしろから彼の背中が見えるところ。

わたしの左斜めうしろにはえっちゃんが座っているから、本城くんを盗み見ているのを、えっちゃんに盗み見られてしまうのだけど。


彼は、左肘を机について、こめかみのあたりに指を添えながらノートを取る。そのときの、腕から手の甲にかけての筋や血管がセクシーで、いつもぼけっと見とれてしまう。

おかげでわたしはノートを取るのがとっても遅い。


そのときにどうしても目に入ってしまう、すっとした襟足も好き。黒い髪が少し焼けた肌にふわふわ触れていてかわいいんだ。

できれば本城くんのうなじに触れている襟足になりたい。なんて、また変態くさいことをぼんやりと思う。


うしろから眺めているだけなのに、日に日に好きの気持ちがふくらんでいく。好きなところが増えていく。これ以上好きになるところなんてないって思うのに、それでも毎日、どんどん好きになる。

えっちゃんにはよく「また見てたね」ってからかわれる。そんな日々。


なんの進展もない恋だけど、宝物みたいな気持ちを抱きしめて、毎日彼の背中をぼうっと見つめているだけで……幸せだな。

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