わらって、すきっていって。
京都はすごい街だった。まるで教科書のなかにいるみたいな感じだ。いままでに行ったどんな街とも違う。うまく言えないけれど、ここはとても特別な場所だということを、全身でひしひしと感じる。
ぼけっと口をあけて圧巻されているわたしの背中を、えっちゃんがバシッと叩いた。
「ほら! ぼけっとしてる時間なんてないよ!」
「えっ!?」
「お抹茶のパフェとわらびもちと八つ橋食べに行って、それから偶然を装って本城たちと合流するんだから! きょうは忙しいよ!」
「は、はい!!」
バスを降りた瞬間、腕時計とスマホとグルメ本を順番に見ながら、とても遠足だとは思えない速さで歩き始めたえっちゃんに、もはやついていくので精いっぱいだ。
足をせわしなく動かしながら、まだがやがやしているクラスの群れをちらりと見る。そしてすぐに嫌になる。わたしの両目はもう、一瞬で本城くんを見つけられてしまうんだ。
盗み見のスキルはきっともう達人レベルだ。本城くんは想像すらしていないんだろう。わたしがこんなふうに、いつも遠くから見つめているなんてこと。
「よーし。まずはパフェ食べに行くぞー!」
「はーい!」
高校最後の遠足。そして人生初の古都、京都。
どうなることやら、どきどきでめまいがしそう。