わらって、すきっていって。

アイスクリームが溶けてしまっている。長いスプーンでぐるぐるかき混ぜると、グラスのなかが優しい緑色に染まった。

えっちゃんはさっきからニマニマした顔で、野間くんとマメに連絡を取りあっていた。


「ねえ、守田くんと野間くんって、もしかしてわたしが本城くんを好きってこと……」

「あー知らない知らない! 言うわけないじゃん! ちょっとは信用してよねー」


べつに、信用していないわけではないけれど。えっちゃんならじゅうぶんにありえる気がするんだもん。あんこが本城を好きなんだって、つい、こう、ポロッとさ。


「そんなことよりさっさと行くよ!」

「い、行くってどこに?」

「決まってんじゃん。わらびもち食べに!」


時計をちらりと見たえっちゃんに急かされて、溶けた抹茶アイスを流しこんだ。歯にキンとしみる。

あわただしくお会計を済ませて、あわただしく今度はわらびもちのお店へ。

それから京都の顔と言ってもいい八つ橋を食べに終わったころには、すでに集合時間は2時間後に迫っていた。

それにしても全部美味しかった。泣く泣くあきらめたお店もたくさんあるし、今度はゆっくり来たいな。そう言うと、絶対に「本城と?」なんて茶化すひとがいるから、口には出さなかったけど。


お土産を買うために新京極へ行く前に、えっちゃんに言われて、手ぐしで髪を整えた。どうやら本当に本城くんたちと合流するつもりらしい。
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