わらって、すきっていって。

「これでお願いします!!」


ちょっとふてぶてしい白いネコ。ニッキの生八つ橋に寄り添って背中を丸めている、それは決してかわいいと言えるような見た目ではなかった。

しまった。なんてものを選んでしまったんだ。


「安西さん、ネコ好きなの?」


それでも本城くんは、笑顔のなかに少し驚きを混ぜた顔でわたしを見つめた。


「俺も大好きなんだ。うちでも飼ってるし」


それはもしかして、LINEのアイコンのネコちゃんでしょうか。

とってもかわいい白いネコちゃん。ふかふかそうなネコちゃん。本城くんのアイコンだから、たぶん無意識も合わせて、もう100回は見ているその子。

本城くんはわたしの手からストラップを優しく奪うと、ありがと、と言った。優しい声だった。


「うん、これにする。妹も喜ぶと思う」


それは絶対に嘘だ。嘘に決まっている。だって、そんなぶさいくなストラップ、わたしだったらもらってもうれしくないもん。


「安西さんもそろそろお土産選ばねーと、もう時間なくなるよ」

「は、はいっ」


本当はもっとちゃんと選ばせてほしかった。でも、きっとどれだけ時間をかけても、どうせわたしはあのぶさいくなネコを選んでしまうんだろう。

もう一度彼に、「ネコ好きなの?」って、「俺も大好き」って、笑ってほしくて。


家族へのお土産選びなんかに集中できるわけがなかった。結局、定番の八つ橋と、お母さんに頼まれていたご当地ストラップを買っただけ。
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