わらって、すきっていって。

そんなわたしを見て、えっちゃんは「相変わらずだなー」とあきれたように笑う。それでもわたしの視線はずっと、ある一点にくぎづけだった。


本城くんは特に目を引く存在っていうわけでもない……と、思う。彼より顔がきれいなひとも、背が高いひとも、うちの学年にはきっといる。

クラスの中心にいるわけでも、面白いことを言うわけでも、場のムード―メーカーになるわけでもない。

たぶん彼は、自分が話すより、誰かが話しているのを聞くのが好きなタイプ。さっきから友達の話をうんうんと聞いては、時折目を伏せて笑っていて、その仕草が素敵だなあって。


……やっぱりかっこいいよ、本城くん。わたしのなかでは世界一だ。



「――ねえあんこ、誰見てんの?」

「え!?」

「いやー、さっきからふにゃっとした顔で一点集中してるから。あのへんかなー」


えっちゃんが本城くんのほうをビシッと指さした。

あたっているからなんとも言えない。えっちゃんは本当に鋭い。


「守田(もりた)?」

「ち、ちがうっ」

「野間(のま)?」

「ちがうっ」

「えー。じゃあ、本城?」

「ち、ちが……う……うう」

「ほお?」


上手く嘘をつける体質に生まれたかった。嘘はよくないけど、今回ばかりはそう思った。

えっちゃんは頬杖をついて、ニマニマしながら本城くんとわたしを交互に見る。これは完全にバレてしまった。最悪だ。
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