わらって、すきっていって。
ぼんっと顔が熱くなる。熱いのがさらに熱くなったのに、爆発しないのが不思議でならないよ。
「……安西さんて、さ」
「は、はいっ」
右方向に逸れていたその瞳が、ちらりとこちらを向いて。同時に、ばちっと目が合った。
「や……なんでもねーや」
「えっ」
「……なんでもない、ごめん。そろそろ集合時間だな」
周りを見ると、あんなにもたくさんいたうちの制服の生徒が、もうほとんどいなくなっていた。
本城くんが守田くんたちに声をかけに行く。
そんな光景を呆けたまま眺めていると、えっちゃんがわたしのほうに駆け寄ってきたので、思わずとっさにストラップをポケットのなかに突っこんだ。
べつに隠したいわけじゃない。どちらかというと、いますぐにでも世界中に自慢したいくらい。
ただ、少しのあいだ、秘密にしておきたかったんだ。わたしにストラップをくれた本城くんを、なんとなく、誰にも知られたくなくて。ひとりじめしたかった。
ポケットに秘密を忍ばせていると思うと、それが本城くんとのものだと思うと、それだけで気を失いそうになるよ。
「ねえ、いま本城となに話してたの?」
「べつに、なんでもないよ」
「なにそれ。うわーえっちー」
「な、な、なにが!! なんで!!」
えっちゃんにからかわれながら、少し前を歩く本城くんの背中を見つめて、さっき彼はなにを言いかけたんだろうと思った。聞きたかったな。
なんだか右のポケットがあたたかい。