わらって、すきっていって。
本城くんにもらったストラップは、悩みぬいた末、結局お気に入りのポーチにつけることにした。
くちびるにリップクリームを塗るとき。
くしで髪を整えるとき。
体育の前、髪をまとめるとき。
一日のいろいろな場面で彼との思い出に出会えて、この上なく幸せな気持ちになれるんだ。きっと本城くんはそんなこと知る由もないんだろうけれど。
ぶさいくなネコが揺れるたび、わたしの心も一緒に揺れる。
そんな気持ち、知ってほしいけれど、知られたくないよ。
「――あんこ。もうちょっとで大会だって知ってた?」
「へっ?」
4限終了のチャイムと同時に、えっちゃんのよく通る声が降ってきた。ぶさいくなネコを眺めてにやついていたときだったから、変な声が出てしまった。
「……あんこ最近、よくそのストラップ眺めてるよね」
「えっ!? そ、そうかな!?」
「それ、京都のやつでしょ。どうしたの?」
「い、いやあ……かわいいなあと思って買ったやつだから、ついつい見ちゃうっていうか、その、ね!」
「あー、なるほど、はいはい。本城ね?」
「えっちゃん!?」
わたしの話、ちゃんと聞いてました!?
「もらったの?」
「ち、ちが……」
「自覚がないようだから言うけど、あんた嘘つくの向いてないからやめたほうがいいよ」
まぶたを半分まで下げてじとっとわたしを見つめるえっちゃんに、やっぱり隠しごとはできない。渋々ながらうなずくと、彼女はとても楽しそうに口をあけて笑った。
思った通りの反応すぎて、むしろもうとても気持ちがいいよ、えっちゃん。