わらって、すきっていって。

べつに元来ポジティブなほうではない。でも、こんなにも情けないほどネガティブ思考になったのって、きっと生まれてはじめてだ。


「絶対わたしの気持ちバレてるもん……。鬱陶しいって思われてたら死ぬ……」

「あっはっは! あんこ、最高にかわいいね、あんたは!」

「なに言ってるか全然分かんないよえっちゃん……」

「そんな心配しなくてもねえ、本城ってたぶん相当な鈍感クソバカ野郎だから。あんこの気持ちになんか微塵も気付いてないよ、あんなの」


そうだといいんだけどな。いや、でも、なんだかそれはそれで悲しい気がしなくもないのだけど。

それにしてもえっちゃんはボロクソに言い過ぎだ。それが彼女の親近感の表れだとしても、あまりにもひどい。鈍感クソバカ野郎、って。


「いやあ。それにしてもあんこって、本気で本城に恋してんだね」

「あー、またそうやってバカにするー」

「してないよ。うらやましいなあと思ってさあ」


わたしはそんなふうに余裕綽々に笑っているえっちゃんのほうがうらやましくて仕方ないよ。

恋はポジティブとネガティブが一定の周期でやってくる病気だ。幸せと不安が、喜びと苦しさが、交互にやってくる病気だ。


「ね、本城の応援行くでしょ?」

「……うん、行きたい。行く」

「オッケー、決まりね!」


彼の、守田くんたちと談笑しているその横顔をちらりと見て、胸の奥のほうが苦しくなった。

……やっぱり、笑った顔、好きだな。

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