わらって、すきっていって。

きょうも本城くんの声を聴けた。うれしい。

ちーくんがうちのクラスに来ていなかったらきっと言葉を交わせずじまいだったと思うから、ありがとう、ちーくん、勝手に。


「よお本城。あれ、またおまえ黒くなったんじゃねえの?」

「……わりと気にしてるから、それ。地黒なこと」


夏がもう目の前に迫っている。制服もいつの間にか夏服に変わっていた。

じりじり照りつける太陽の下、毎日かかさずに走っている本城くんは、やっぱり少し日焼けした気がする。

そうか、でも気にしているんだ、色黒なこと。やっぱり本城くんはかわいいひとだ。

好きなんだけどな、わたしは。本城くんの小麦色の肌。

そんなことを気軽に伝えることができる関係なら、どんなによかっただろう。なんて。


「日焼け止めもちゃんと塗ってんだけどな」

「わはは! え、おまえ日焼け止め塗ってんの!」

「だってこれ以上黒くなりたくねーじゃん……」


なんてこと! 日焼け止めを頬に塗る本城くんを想像して、勝手に頬が緩んでしまうよ。

そんな顔を隠すようにさらにうつむくと、ちーくんが「あんこも笑ってんぞ」とか、余計なことを言う。バカ。本城くんに性悪だと思われたらどうしてくれるの。


「安西さんにまで笑われた……。やっぱり男が日焼け止め塗るなんておかしいかな。そうだよなあ」

「いや、ちがくて! わたしはいいと思う! スキンケアできる男性って素敵だと、思う、ですっ! かわいらしいっていうかっ」


ああ、わたしはまたなにを言っているの。本城くんだって目をまんまるにして驚いている。

いつになったらわたしは本城くんと上手に話せるようになるのだろう。
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