わらって、すきっていって。
でも、そんなわたしにも、彼は優しく笑ってくれる。
「ふは。安西さんにそう言ってもらえるとなんかうれしい」
ダメだよ、本城くん。その顔は反則だ。笑いかけてもらうたび、どんどん深みにはまってしまうよ。
この気持ちが消える日なんてこないんじゃないかって思う。本気だよ。
「――あ、そうだ!」
そのとき、ちーくんの元気な声が空を切った。そろそろ顔が爆発しそうだったから、少しほっとした。
「そういえばこないだ兄貴がライブのチケットくれてさ。あまいたまごやきってバンドなんだけど、おまえら知ってる?」
「え、あまいたまごやき?」
「知ってんの、本城?」
「知ってる。つか、結構好き。こないだメジャーデビューしたばっかりだよな」
「らしいなー。オレ音楽はマジで疎いから全然分かんなくてさー。でも本城が好きならちょうどよかった! 2枚あるから誰か誘って行ってこいよ」
「えっ、マジ? いいの?」
そのバンドならわたしも知っている。本城くんみたいに詳しいわけではないけれど、テレビやラジオで何度か耳にして、素敵だなって思っていたんだ。
まさか本城くんも好きだなんて思わなかった。今度CDをレンタルして、きちんと聴いてみよう。
「うわー霧島ほんとありがとう! お兄さんにもお礼言っといて」
「おー。兄貴も仕事で行けなくなったっつってたし、全然気にすんなよ」
チケットは2枚だと言っていた。本城くんは誰を誘うんだろう。誘ってもらえるひとが憎いほどにうらやましいよ。