わらって、すきっていって。

ふと、レンタルCDショップの看板が目に入った。さっきのライブのチケットが頭に浮かんで、思わず足を止めると、ちーくんが「入りてえの?」と声をかけてくれる。


「うん。ちょっと寄ってもいい?」

「おー。オレもちょうど見たい映画あったし」


そう言うと、ちーくんは新作の映画コーナーへと歩みを進めた。


置いてあるだろうか、あまいたまごやき。どこにあるんだろう。

いままで特に熱烈に応援していたアーティストもいなかったので、実はこんなふうにCDを見に来ること自体がはじめてだったりする。結構いろんなCDがあるんだなあ。


「……あ。これ、かな?」


やっぱりまだ出てきたばかりのバンドだからか、そのCDは売り場の端っこに、ちょこんと1枚だけ陳列されているだけだった。それにしても、最初耳にしたときも思ったけれど、本当にインパクトのあるバンド名だなあ、『あまいたまごやき』。

かわいいジャケットだ。このCD、本城くんは持っているんだろうか。


「――あまいたまごやき?」

「えっ」


突然、ちーくんの声が降ってきた。反射的にCDを隠して振り返ると、彼は首をかしげて口を開く。


「なんだ、あんこも好きだったのかよ?」

「いや、えっと……すごく好きってわけじゃないんだけど、何度か耳にしたことがあって。それで……きょうたまたまその話になったから聴いてみようかなって……思って」


なんだか言い訳じみた説明になってしまった。変に思われないといいけれど。


「ふーん……」


ちーくんはそれだけこぼすと、選んだDVD3枚を持ってレジへ行ってしまった。
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