わらって、すきっていって。

わたしもあまいたまごやきのCDを借りて、ちーくんと一緒に店の外へ出た。もう夕方だというのに蒸し暑い。夏が近づいてきている証拠だ。


「……あんこさあ」

「ん、なに?」


いつもより半音低い声が可笑しくて、含み笑いでその顔を見上げた。それなのにその表情はどこかまじめだったから、なんとなく恥ずかしくなって、思わずうつむいた。


「いや……べつに、たいしたことじゃねーんだけどさ」

「うん?」

「あんこって、好きなやつとかいねえの?」

「ええっ!?」


いきなりなにを言いだすかと思ったら。なんてこった。いかんせんこの18年間、ちーくんとは恋愛の話をしたことがなかったものだから、変な声が出てしまったよ。

どうして突然そんなことを訊くんだろう。まさかわたしの気持ちに気付かれてしまったとか、そんなわけは……ないよね?


「いや……最近本城と仲良いみたいだからどうなのかと思って。べつに好きとかそういうんじゃねーなら、それでいんだけど」


驚いた。普段は鈍感なちーくんのくせに、わたしのこととなるとなんでも分かっているんだもんなあ。

いつかちーくんには言わないといけない。いまはまだやっぱり気恥ずかしさとかいろいろあるけれど、もう少ししたらちゃんと伝えよう。本城くんのことが好きだって、ちーくんには、絶対に。


「うん。好きなひととか……そういう存在ができたら、ちーくんには絶対に報告するつもりでいるよ」

「……おー。つか、絶対オレのほうが先に彼女できるけどなっ」

「えーほんとかなあ。ちーくん、かわいいからなあ」

「なんだよ、どういう意味だよそれ!」


ちーくんのそういう話って聞いたことがないけれど、実際どうなんだろう。彼女とか、好きな子とか、いままでにもいたんだろうか。ちーくん、かわいくてかっこいいから、結構人気あると思うんだけどな。幼なじみのひいき目を抜きにしても。

もしこれから好きなひとができたり、彼女ができたりしたら、報告はいちばんにわたしにしてほしい。それは幼なじみのわがままかなあ。

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