わらって、すきっていって。
ほんじょう。いま、ほんじょうって。聞き間違いかな。
恐る恐る黒板を確認した。心臓がどくどく脈打っていた。『保体男子』の下に、たしかに『本城』と書かれていた。
……まさか、本当に?
あれが本城くんの字。几帳面な字。少し右上がりになっている『本城』の、その横に、先生の字で、『安西』。
うそ。見間違いじゃない。本当に、本当に、本城くんだ……。
「じゃあ今年1年、これでいくからなー。後期また決め直すの面倒だし。つーか委員会なんて特にやることもないしなー」
目の前がチカチカした。今年1年、本城くんと、同じ委員会。
先生はほかにもなにかしゃべっていたような気がするけど、そんなの耳に入ってくるわけがなかった。恐ろしい速さで動いている、自分の心臓の音しか聞こえない。
「よかったじゃん、あんこ!」
「ちょっとえっちゃん声大きい……!!」
よかった。いや、よくない。
うれしような、そうでもないような。なんともいえない感じ。なぜか身体中に鳥肌が立っている。
ちらりと本城くんを見ると、ばちっと目が合ってしまった。はじめて目が合った。たぶん本城くんは、いまはじめて、わたしという存在を認識した。
……ああ、どんな顔をしたらいいんだろう。
だって、2年前から、ずっと好きだったんだ。ずっと見ていたんだ。そんなひとが、いま、わたしを見ているんだ。嘘だと言われたほうが納得できる。
たぶん変な顔をしていたと思う。そんなわたしに本城くんは遠慮がちに微笑んで、ぺこっと頭を下げた。
もうダメ。心臓が爆発しそう。
どうすればいいのか分からなくておもいきり頭を下げると、勢い余って机におでこが激突した。ごん、という鈍い音がして、本城くんが「ぶっ」と笑った。最悪だ。初っ端からもう消えたい。