わらって、すきっていって。

それでも当の本城くんはにこやかに笑っているし、おまけにドーナツを美味しそうに頬張っているし。きっとなんでもないことのように思っているんだろうな、全国大会に出場すること。

そんな彼をを横目で見て、ちーくんが大きく息を吐いた。


「あー、くそ。本城かっけーなー……」

「え、なに?」

「なんでもねーよバカ。がんばれよバカ。応援行くからなバーカ!」


なんというツンデレ具合なの。思わず笑ってしまったよ。

ちーくんは幼いころからずっとこうだ。かわいいなあ。えっちゃんが早くこのかわいさに気付いてくれたらいいのに。

そう思って彼女のほうを見ると、ばちっと目が合って、口元だけで笑われた。笑われたというか、にやつかれたというか。さてはまたなにか面白がっているな。


「本城。あたしもあんこも行くからね、応援」

「え、マジで来てくれるの? わりとほんとにうれしい」


わざわざありがとう、と、本城くんが笑った。

同時に彼のかわいらしい八重歯がのぞいて、思わずうつむいてしまった。やっぱりまだ正面は慣れないよ。どこを見たらいいのか分からなくなる。


「大会いつだっけ?」

「来週末。もうほんとにあとちょっとだから気合入れねーと」

「うわ、そうだな。マジでがんばれよ、本城」

「ありがとな、霧島」


がんばってねと、あわててわたしも言ってみた。ちーくんに便乗するようで情けないけれど、これがいっぱいいっぱいだ。

それでも本城くんは笑ってくれる。ありがと、と優しく言ってくれる。やっぱり好きだよ、本城くん。そういうところだよ。


大会は来週末。ということは、7月30日。もう7月が終わるんだ、早いなあ。

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