わらって、すきっていって。

本城くんは本当にお腹がすいていたらしく、屋台でいろいろ買ってはぺろりと平らげていた。からあげ、フランクフルト、フライドポテト、お好み焼き。その細い身体のどこに、これだけの量が入るのだろう。

彼は意外にも『ひとくちあげる』が普通にできるひとだったので、どれもひとくちずつもらってしまったし、間接キスだし、いちいちどきどきしてしまったし。

食ってばっかりでごめん、付き合わせてごめん、と恥ずかしそうに笑う彼の横顔があまりにもかわいくて、ぜひともわたしを食べてくださいなんてまた気色の悪いことを思う。

それにしても本城くんって結構食べるひとなんだな。運動部だから普通なのかな。

またひとつ、彼のことを知れた。


「ずいぶん暗くなってきたなあ」

「そうだね。もう少しで始まるのかな」

「たぶん7時からだったと思う。あと15分くらいかな」

「わ、もうちょっとだ! 楽しみ!」


打ち上げ花火なんて何年ぶりだろう。こんなにも近くで見るのなんて、もしかしたら小学生ぶりかもしれない。

ちゃんと花火に集中できたらいいな。わたしのことだから、本城くんに見とれてしまって仕方ないなんてことも大いにありえそうで。


「もう少し見やすい場所に移動しようか。ここだと人も多いし」

「あ、うんっ」


するすると人混みを縫っていく本城くんに置いていかれないように、わたしも一生懸命足を動かした。

……はずなのに。


「……あれ?」


しまった。転ばないようにと足元に気をとられすぎていたせいで、前を歩いていたはずの本城くんがいつの間にか消えている。

どうしよう。……もしかして、はぐれてしまった?
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