わらって、すきっていって。
突然、ドン、という音が聴こえた。心臓に直接響いてくるような音だった。
上を見ると、気が遠くなるほどの黒を背景にして、鮮やかな花が大きく咲いている。
「ほ、本城くん! 花火っ」
「うん」
気付けば人混みからは少し離れた場所まで来ていて、あたりは静かで。それでも花火はとてもよく見えるので、驚いた。
本城くん、よくこんな穴場を知っているなあ。すごいとか、ありがとうとか。なにか気が利いたことを言いたいのに、いまはあの輝きに必死で、なにも考えられないよ。
「……花火って、きれいなんだな」
「うん、そうだね。きれい……」
奇跡って、起こるものなんだなあ。
こうして彼の隣で、こんなにも美しい花火を見られるなんて。手をつないで、見られるなんて。
この事実だけであと100年は生きていけるような気がする。死にそうになったり寿命が延びたり、我ながら支離滅裂だってことは自覚している。
でも、恋ってたぶん、こういうものでしょう?
世界には、花火が打ち上がる音と、散っていく音。ただそれだけが落ちては消えて、本城くんとわたし、まるでふたりきりになったみたい。
「……あのさ」
長い沈黙を経たのち、先に口を開いたのは本城くんのほうだった。声のほうを向くと、彼はすでにわたしを優しく見下ろしていた。
「美夜が、安西さんのことすげー気に入って」
「え?」
「会いたいって言ってたから、今度遊んでやってくんないかな。ほら、あいつあんな身体だろ。だから毎日つまんなそうにしててさ」
まるで隕石が頭上に降ってきたよう。それはわたしの頭に直撃して、さっきまでの幸せな気持ちまで粉々に砕いてしまった。