わらって、すきっていって。
夢のようなひと夏はあっという間に終わりを告げ、新学期が始まるころにはもう、周りは受験一色で。模試だの講習だの参考書だの、頭が痛くなるような単語が教室中に飛び交っていた。
まだ夏休みが終わったばかりなのに。いや、もうそんなこと言っていられないことは分かっているのだけど。
……本城くんは、どうするのかな、進路。
「――てなわけで。我が3年3組の出し物はシンデレラに決定でーす!」
実行委員の守田くんが高らかにそう言ったのと同時に、教室のあちこちから歓声と拍手が起こった。
10月の頭にある文化祭。受験真っ只中の3年生にとって最高の息抜きが、それだ。
「みなさん。やるからには絶対に優勝しましょう。目指すはグランプリのみっすよーいいですかー!」
その言葉でよりいっそう盛り上がるクラスメートたちを眺めながら、わたしもどこか心躍っている。
うちの学校の文化祭は、全クラスがそれぞれなにかしらの出し物をすることが決まりになっていて。演劇だったり歌だったりダンスだったり、内容はなんでもいいのだけれど、とりあえずステージでなにかすることになっている。
そして、そのなかから全校生徒の投票によって、いちばん素晴らしい出し物だったクラスを決める。それがグランプリ。いつからある伝統なのかはよく知らない。
べつにグランプリを獲ったからといって特に報酬やご褒美があるわけではなのだけれど。こういうことにいちいち熱くなってしまうクラスのみんなが、わたしは結構好きだ。