わらって、すきっていって。

それからみんなで、配役やざっくりとした台本を決めた。

えっちゃんはいじわるな継母役に決まった。クラス全員、満場一致の配役だった。なぜかえっちゃんも喜んでいた。

肝心のシンデレラは予想通り、クラスでいちばんかわいい女の子に。

そして王子役は、なんと、本城くんに決まってしまった。

推薦したのは実行委員の守田くん。スタイルがいいからステージで映えるんじゃないかっていうのが、その配役の決め手となったみたい。

王子様な本城くんはわたしも少し見てみたいし、実際にそんな貴重なものを見られるのは素晴らしいことだけど、でも。

やっぱり、なんだかちょっと複雑だよ。



「あたしが推薦してあげたのに。あんこのこと、シンデレラに」


主要な役が決まったことでざわついている教室で、えっちゃんが耳打ちしてくる。


「それは絶対に嫌だあ……」

「でもシンデレラ勝ち取ったら合法的に本城とイチャイチャできるじゃん?」

「そういう問題じゃないよ……」

「なんでよー。だって嫌じゃない? 演技だとしても、本城がほかの女と恋愛ごっこするんだよ?」


それは、そうだけど。もちろんそんなのは嫌に決まっているのだけど。

でも、わたしは顔も性格も、その他もろもろひっくるめても、お姫様になれるタイプの女の子じゃない。そんなの自分がいちばんよく分かっている。

それに、たとえば万が一わたしがシンデレラをすることになってしまったら、今度こそわたしの気持ちがバレてしまうんじゃないかって思うんだ。もうとっくにバレバレなのかもしれないけれど。

それでも、ここでシンデレラを勝ち取りにいけるほど、わたしのメンタルは強くできてない。
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