わらって、すきっていって。

本城くんはどう思っているのかな。王子役をすること。

はじめは無理だとうなだれていた彼だけれど、そういえば、シンデレラ役が正式に決まってからだったっけ、本城くんが首を縦に振ったのは。

やだな。こんなことでネガティブスイッチがオンになってしまった。


やがて、あれよあれよとすべての配役が決まると、脚本制作、衣装制作、大道具、小道具の裏方の仕事も徐々に決まっていって。シンデレラというお話自体あまりキャラクターがいないので、クラスの半数以上がこの裏方だ。

わたしは大道具に決まった。主に舞台のセットを作ったりする係。

王子様とは雲泥の差。天と地の差。まるで月とすっぽんだ。悲しい。


「よりによって大道具って、あんこ」

「いいんだ……日曜大工的なこと好きだし……絵描くのも好きだし……わたしにぴったり……」

「うわあ、完全に心を忘却してるでしょ」


がばっと机に突っ伏すと、えっちゃんが苦笑した。残念ながらわたしは苦笑いすらできない。


やがて、すべてが決まってお開きになった教室の端っこで、シンデレラちゃんと話している本城くんが見えた。

お互いに挨拶をしているみたいだ。慣れない様子でぺこぺこと頭を下げ、はにかみあうふたりを見て、このまま机に溶けてしまいたいと思う。

だって本当にお似合いなんだもの。そりゃそうだ。美少女なシンデレラちゃんと、世界一かっこいい本城くんが、釣り合わないわけがない。


みじめだ、わたし。

こんなことなら『舞踏会でシンデレラに嫉妬する娘A』にでも立候補したらよかった。

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