彼の代わり【TABOO】
彼の代わり
そこは1歩踏み込むと静寂な空間が広がる。
私が一番落ち着ける場所...。
一番高い本棚に手を伸ばす。
背伸びをして、腕をピーンと伸ばして。
数か月前までは、こんな時彼がそばにいてくれた。
私の横からサッと手を伸ばし私の読みたい本をすぐに取ってくれていた。
彼との遠恋も半年を過ぎた頃からメールも電話の数も減っていた。
彼と過ごしていた時間を今ではここで本を読んで過ごしている。
後少し…
届きそうで届かないもどかしさ。
「危ないよ。」
よろけた私を抱きしめ首筋にキスをする。
「湊さん・・・」
こうなると私の一番落ち着ける場所はドキドキとスリリングに満ちた空間になる。
本棚と本棚で仕切られた死角で密着し唇を重ねる。
湊さんとの出会いはもう数年前。
彼と一緒に参加した絵本の読み聞かせのボランティアで知り合った。
湊さんはボランティアのリーダーで私の彼の先輩でもあった。
優しくて・・・頼りがいがあって憧れの存在だった。
そんな湊さんが私に優しくしてくれるのは後輩の彼女だからってずっと思ってた。
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