唯一無二のひと
この一年の間に煙草も止め、バイクも売った。
本やCDは、リサイクルショップで買い、お酒は、休みの前の日に、350mlの発砲酒を一本だけ。
車も軽自動車に買い替えた。
仕事に追われる日々の中、細かいチリが溜まるように、豪太の中で不満がたまっているのは、秋菜にもわかっていた。
だから、秋菜も家の事も育児も全て自分でやった。
今時、古い考え方かもしれないけれど、豪太は一家の大黒柱。
仕事に集中出来る環境を作ってやりたかった。
豪太は、ほとんど柊のオムツを替えたことがない。
風呂も毎日秋菜1人で入れた。
だから、休みの日、豪太は家でゴロゴロ出来た。
(私が働いたら、そうはいかないよ。
育児も家事も分担制だからね…)
今朝、玄関先で、秋菜はそのセリフを飲み込んだのだった。