唯一無二のひと
朝日山学園
「さあ…私もわからないな。
でも小さいのでいいの。
見栄えなんか全然気にしないから。
大きいと収納場所も困るし」
「…わかったわ。
ちょっと考えてさせて。
それじゃ、またね」
由紀恵は、慌てたように電話を切った。
(きっと、ママはこのあとすぐに島田に相談するんでしょ…)
秋菜は思った。
母・由紀恵の相手は島田という。
秋菜が幼稚園の頃からの付き合いで、由紀恵よりもずっと歳上の男。
長い間、島田にとって由紀恵は唯一無二の存在ではなかった。
彼には、妻がいた。
お妾さん。
愛人。
秋菜は、心の中で時々、由紀恵をそう呼んだ。
島田は母を翻弄し続けた。
秋菜も大人になって結婚し、人の子の親になった。
女手一つで育ててくれた母には、感謝しているし、過去のことは仕方ないと思えるようになったけれど、島田だけは絶対に許せなかった。