唯一無二のひと


ゆで卵みたいにつるんとした白い頬っぺた。

伸びたスポーツ刈りの毛がツンツン上に立っている。

人懐こそうな丸い瞳が印象的だった。




『なんで朝日山なの?』


男の子は訊いてきた。



今日、転校一日目だった。

小学生の時、二度転校したことがあったけれど、中学では初めてだった。




緊張し過ぎて、誰の名前も、誰が誰とかも全然覚えていなかった。



『…ママが入院しちゃったから』


秋菜は下を向き、小さな声で答えた。



豪太と初めて交わした会話だった。



『ふうん。
じゃ、面会とか来るんだ。
俺はね、ずっと誰も来ないよ。
今まで一度もね。そう言うの、ドラマ
みたいでおもしれーべ?』


『…誰も来ないの?本当に?』



上目遣いに訊いた時、誰かが秋菜の肩をドン!と勢いよく押した。

秋菜の身体が大きく揺れる。
びっくりして、声が出なかった。



リリカ、理恵、莉乃の高校生グループだった。

リリカは高2、理恵と莉乃は高1。三人とも頭に「リ」がつく。血縁関係はない。



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