唯一無二のひと
窓の外はいつのまにか夕暮れだ。
ポッキーもポテトチップスも既に無くなった。
コーラもぬるくなって飲めたものじゃない。
『……秋菜』
仰向けのままの豪太が、秋菜の方を見る。
左手を伸ばし、天井を見つめる秋菜の右手をそっと包み込んだ。
秋菜の温かい手は微動だにしない。
豪太は、そっと秋菜の手を撫でた。
『こっち見て……』
豪太が言いかけた時。
秋菜の大きな瞳から、ポロリと涙の雫が流れ落ちた。
『……ごめん!そんなつもりじゃ…』
豪太は慌てて、左手を引っ込めた。
『違うの…違うの…』
秋菜は何度も首を横に振る。
しゃくり上げ、泣き始めた。
『……鬼ばばが帰ったあと、お風呂から出たら、オカメインコのピッピが籠の中で死んじゃってたの…』
秋菜の話はそこで終わった。
しかし、秋菜の胸の中には、豪太にも出来ない話の続きがあった。