唯一無二のひと
昼ごはんを作り終えた豪太は、
「本屋と電器屋に行く」と言って、車で出ていった。
「皆で一緒昼ごはんを食べよう」
といったのに、
「味見しながら、食ったからいい。
腹が膨れた」と言った。
「ゆっくりしてって下さい」とママ友達に愛想良く言って。
豪太がいなくなった途端、美人のくせにあけすけなリンちゃんママがテーブルに身を乗り出して言う。
「ねえ、柊君ママのところってさ、
週1回は必ずしてるって感じだよね!」
「……!」
思わず秋菜は、食べていた海老をぷっと吹いた。
ありさちゃんママとハヤト君ママも
「また始まった」と言って笑い出す。
リンちゃんママの目下の悩みはこれだった。
「うちなんかリンが生まれてから、二回しかしてないんだよ!二回だよ!完璧なるレスよ!」
リンちゃんママは指でVの字を作り、皆に向かってグイグイと突き出す。
二人目が早く欲しい彼女は、旦那に頑張ってもらいたいのに、仕事が忙しい旦那はなかなかその気になってくれないという。
(うちだって同じようなものだよ……
前はあんなにしてたのに)
やだあ〜リンちゃんママったらあと、皆と一緒に笑いながら、秋菜の心の中では、笑い事には出来なかった。
賑やかな三人のママたちとちびっ子怪獣は、夕方5時ごろ、帰っていった。
「柊くんパパ、今日はどうもありがとう」
「本当美味しかった。今度、お店の方にも行くからねえ」
外出から戻ってきた豪太は、ママ友達から口々に賞賛の言葉を貰い、
「どういたしまして」と言って謙虚に頭を下げる。
秋菜と一緒に玄関先まで出て来て、笑顔で皆を送り出した。
パタンと玄関のドアが閉まった途端、豪太はジロリと秋菜の方を見た。
秋菜はどきりとする。