唯一無二のひと
当然のように、お店でランチやお茶をすることになる。
付き合うのはやぶさかではないけれど、お金のかかることは正直いってやりたくなかった。
皆、お金が潤沢にあるようにみえる。
リンちゃんママの旦那は大手銀行員の高給取りだし、ありさちゃんママは公務員の夫に、義父母と同居していて家賃ゼロ。
ハヤト君ママは、地主の一人娘だ。
皆、お金に苦労したことのないお嬢さん達だ。
一戸建てに住み、旦那の車とは別に、当たり前のように自分の車を持っている。
アパート住まいで、家に軽一台というのは、秋菜だけだ。
それでも、彼女達は秋菜に一目置いていた。
中学の同級生と結婚した秋菜を、一途な初恋を貫いた人として。
純愛だとか、とてもロマンチックだとか口々に言うのだ。
それが人に自慢できることだとすれば、まさしく秋菜はそうだった。
ママ友達には、豪太が施設育ちだとか、秋菜自身も一時施設にいた事をカミングアウトする気はなかった。
家庭を持った今、どんな環境で育ったかなんて関係ない。
ここでは、朝日山学園なんて誰も知らない。
子供時代のことなど、取るに足りないことだ。