唯一無二のひと
おじさんに促され、意を決したように由紀恵はグラスに入った液体をぐっと飲み干した。
『うおほおーっ、いいねえ!』
おじさんは歓声を上げ、実に嬉しげに言った。
『由紀恵ちゃん。それ飲んじゃったら、身体が火照っちゃって、今夜は眠れないよ?』
『……いやだ、やめてよ…』
由紀恵は、恥ずかしそうに俯き、唇についた赤い血を小指の先で拭った……
秋菜が大人になってこの意味が分かった時、かなりゲンナリした。
母を本気で心配した自分が馬鹿みたいだと思った。
母は子供の秋菜を盾にして、男達の誘惑から身を守りつつ、好意を利用していたのだと、秋菜は気付いた。